水木しげる『奇人怪人大図鑑』を読む。

といっても、そーゆー題名の作品があるのではなくて、ちくま文庫の「妖怪ワンダーランド8」
に収録された作品群に、まとめてこのような題名をつけられただけのよーです。
収録作品は『怪傑くまくす』と『落第王』など、水木氏がブレイクする前までの苦労話と
『新講談宮本武蔵』シリーズ。宮本武蔵モノは、つげ義春と差がわからん。
くまくす伝記は、まー、はー、そーですか、という感じだが、ブレイク前の話は面白かった。


片腕を失って帰国し、悪魔くんや鬼太郎で大ブレイク、ということは知っていたが、やはり
相当な苦労人だったのだなあ。『突撃!悪魔くん』は、まさに悪魔くんが生まれる過程なんすが
出版社は倒産で原稿料は入らない、お金がなくて着るものも質に入れる、家が半分国有地で
立ち退きを迫られ、赤ちゃんが生まれた日に、役人がやって来る、内容証明は来る、で
ぶちぎれた水木氏は、このどうかしてる世の中をたたきつぶす、悪魔の力を持った「悪魔くん」を
生み出すのであった。じゃじゃじゃん。
『落第王』もなー、招集されるまでの話だが、まじですか、というくらい何もできない人だった、
というか、体制に沿った生き方が徹底的にできない人。戦地でもんな感じだったそーで、ビビビンと
はり倒されていたが、現地住民からは唯一愛された日本兵で、終戦時に島民に強く引き留められたとか。


驚いたけど、やはりと思ったのは、つげ義春との類似点。『なめちゃん』は結構性的な話なんだけど
そういう系の話が水木作品にあるとは意外だった。更につげ作品に出てくるような、どーしよーもない
人とか、平気でウソをついたり、泥棒だったり、借金を踏み倒したりする人たちも話もあり、あの時代
そういう界隈ではそのような状況は普通にあったということか。
そして『ドブ川に死す』では才能あるアシスタントの「三毛さん」というキャラが出てくるけど、
どー見てもつげ氏以外の何者でもない。ほんとにこんな感じの人だったのかー。ほほー。
しかし、つげ作品の方は貸本時代の昔の作品からほぼ全部読んでるんだけど、鬼太郎以外のこの辺の
水木作品を読んでなかったのは、つげ作品を語る上では片手落ちと言わざるを得ないなあ。
んで、講談社漫画賞を受賞している『昭和史』全8巻も読みたいなー、と思うのであった。エンドレス。