『虚無への供物』読んだ。

なーんか、やっぱひとこと言いたくなるわい。
2ちゃんのログがあったので、読んでみたけど、傑作言う人と、読んだ
けどイマイチ言う人と半々みたいで、小競り合いとかあったりして、
なるほどという感じでしょーか。
酩酊感というのは確かにあって、自分としては翻弄される感じがちょー
面白かったのである。虚実のはざまをゆらゆらするのは、まさに小説の
醍醐味であることよ。


以下、読了前で、何の予備知識も知りたくないの!って人は読まないで
くださいませよ。
自分も予備知識なく読み始めたつもりだったが、思い返してみれば、例の
2色だけメジャーな5色のアイテムは、ブルータスの記事で知った訳で
それくらいの基礎知識は、逆に事前に知らなければ面白さ半減。
推理小説の古典からの引用やタイトルのパロディや、当時の事件とかも
ある程度わかった上で読まないと、酩酊感は味わえないのかもなあ。
その方向から「面白くなかった」という人への反論をすると「エリート
づらしてんぢゃねーよバーカ」と言われて泥沼化する訳で。
つか、自分がわかったよーな事言えるのも、ネットで情報を補完しながら
だから、反則とゆーか、ネットというインフラのおかげで多少楽しませて
もらえました。とゆーへりくだりが必要っすね。
当時推理小説ファンからは絶大な支持を受けながらも、書評ではおおむね
不評というのは、しょうがない事だったのかもな。
でも、リアルタイムで、かつ事前に膨大な知識を持ってる状態で読めたら、
それが一番楽しめただろうなあ。三島由紀夫が気に入るのも当然て感じで。


それにしても、64年の著作にもかかわらず、この読みやすさは一体なに?
『魔都』とか『ドグラ・マグラ』とか、最初読みにくかったんですが。
文体なのかなあ。全く古くさくないのが、かえって異様。
あと、なんといっても久生のファッションセンスの良さ!作中でもある人に
「べべの好みのええこと」と言わせてて、よく考えたらこれって自画自賛
訳だけど、イヤミというより、自覚してはんのね、と、妙に納得しまうほど
なのだ。誰が良いかなー。若いときの広田玲央名
で、推理合戦とかも、すごく今日的。ワイドショーのコメンテーターの手法
とかぶって見える。・・・ってのはうがちすぎですかね。


しかし、なんといってもすごいのは、読んでる途中で、もはや真相はわから
なくてもOKと思ってしまった事だ。最終的に結論をつけてしまったのは、
あの時代だからああするしかなかったのかもなあ。もし今書かれたとしたら、
結論ナシの方がむしろ評価されたかもなー。
あ、でも、ボルヘスの短編で奇妙な符号で探偵が嵌められる話があって、これ
は奇妙な符号が犯人を苦しめる構図になっているので、この結論は、やっぱ
すごいのかなあ。もっとじっくり読まないとわかんないが。奇妙な符号という
モチーフは、間違いなく面白さと直結してる訳で。自分的には。


うー、キリがないので、ひとまず、ざっと1回読んだ感想はここまで。